増幅器付スピーカー事件

2020/02/10

増幅器付スピーカー事件

 

平成19年04月18日 東京地方裁判所(平成18(ワ)19650 意匠権侵害差止請求権不存在確認請求事件)

 

概要 本件は,原告製品の増幅器を販売する原告が,被告から,原告製品の意匠が被告の有する意匠登録第1276011号の意匠権に係る登録意匠に類似するとして,原告製品の販売の差止めを求められているところ,原告製品意匠は,本件登録意匠に類似しないとして,本件意匠権による原告製品の販売等の差止請求権が存在しないことの確認を求めた事案。(請求棄却)
争点 ①多機能物品の解釈

②意匠の要部の認定

③差異点の評価

対象商品 意匠登録第1276011号 原告製品
被告画像 原告画像
当事者の主張

 

 

被告の主張 原告の主張
(物品の類否)

①意匠に係る物品を「増幅器付スピーカー」としており、増幅器の機能とスピーカーの機能を一体に併せ持つ製品。

②ガイドラインには「○○付××」の記載表現しか許容されておらず、2つの機能に主従関係を意図していない。

③主従関係にない2つの機能を併せ持つ物品と、どちらか1つの機能のみを持つ物品とは、機能に同一又は類似する部分が含まれているから類似物品である。

 

(形態の類否)

<基本的構成態様>

・左右側面が平坦な正三角形からなる正三角柱の形態をなす本体部

・本体部前方に突出した半円形のドック部

<具体的構成態様>

・三角柱の長方形をなす側面が短辺と長辺の比を1対4としている点 他

(物品の類否)

①本件登録意匠には出力端子ないから増幅器単体の機能を使うことが予定されていない。

②本件登録意匠は多数の小孔を配置したスピーカーメッシュで全面を覆っているから主要部分はスピーカーである。

 

 

 

 

(形態の類否)

<基本的構成態様>

・左右の透明部とその内部に配置された外向き真空管が現れている本体部

・上面が丸みを帯びているドック部

<具体的構成態様>

・ドック部の端子形状

・本体部の正面が全体的に無孔

・本体部の上端にボタンがない 他

裁判所の判断 (多機能物品の解釈)両物品は同一ではないから、両物品の用途・機能等から、それらの類似性を検討すると、本件物品は、増幅器及びスピーカーという、2つの機能を有する、いわゆる多機能物品であるところ、増幅器の機能において、原告製品と機能を共通にするものであり、両物品は類似すると解される。

(意匠の要部の認定)

②-1「規範定立」:登録意匠について、当該意匠に係る物品の取引者・需要者が、視覚を通じて最も注意を惹かれる部分、即ち、意匠の要部を把握するに際しては、当該意匠の出願時点における公知又は周知の意匠等を参酌するとともに、当該意匠において新規な美感をもたらすべき創作性の程度の評価等を踏まえて、これを検討すべき。

②-2「本事案における要部の抽出」:本件物品は、ドック部に音声情報が格納された電子機器を装着して利用することが予定されており、そうすると、通常の使用時において、正面・左右・斜め上から俯瞰して観察される外観が当該物品の利用者の注意を惹くと考えられる。

②-3「あてはめ」:以上より、本件登録意匠の要部は、平坦な正三角形の左右側面からなる正三角柱の形態をなす本体部とその前方に突出した円弧状のドック部、三角柱を構成する側面が短辺と長辺の比を1対4とする長方形としている点と認められる。このように面が平らな三角柱形状の筐体とドック部の組み合わせた意匠は他に見当たらないから(公知意匠参酌)、かかる組み合わせ部分は新規で、看者の注意を引く要部である。原告製品意匠も本件登録意匠の要部と共通の構成態様を有している。

(差異点の評価)

ドック部における端子形状の違いが美感にもたらす影響は大きくない。

・スピーカーメッシュは何らかの模様を感得させるような形状ではない。

・本体部上端右端付近のボタンの有無は意匠全体に占める割合が小さく微差にすぎない。

・ドック部の形状違いも本体部との接続形状が共通で類否に与える影響が大きくない。

・本体部に透明な部分の有無、その内部の真空管の有無については、相応に、看者の受ける印象に影響を与えるものといえるが、本件登録意匠の要部の持つ新規性・創作性の程度と、それを原告製品が共通にすることが、意匠の類否判断に大きく影響を及ぼすものである以上、上記差異は、両意匠における前記共通性、類似性を凌駕するものではないと評価するのが相当。

 

公知意匠 公知意匠
考察 ・  多機能物品の解釈が示された裁判例。事後別途、意匠出願する際の物品名の付け方に影響。

・  意匠の要部の認定が広めに認められている。組み合わせ独自の創作性が高く評価されている。

・  透明部と真空管の存在に看者の印象が異なる旨が示唆されている点に留意。