コンパクト事件

2020/02/23

コンパクト事件

 

【平面図】

平成17年4月13日知財高裁判決(平成17年(行ケ)第10227号)

 

概要 関連意匠として意匠登録出願した部分意匠が本意匠に類似しないとして意匠法第10条1項に該当せず拒絶査定となり、その拒絶査定を維持した審決に対する審決取消訴訟。
争点 ①部分意匠における類否判断

②関連意匠における類否判断

対象意匠 本願意匠(仮想) 本件本意匠
当事者の主張 原告の主張 被告の主張
①について

・「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分」(以下「実線部分」ともいう。)の形態の異同を中心的に観察し,その共通点及び差異点を総合評価して,類否判断をすべき。

・実線部分以外の部分(以下「破線部分」ともいう。)の形態の異同を殊更に重視すべきではない。

・破線部分の形態の差異に起因して生じている差異点(以下「破線部分起因差異点」という。)と,破線部分の形態とは無関係な差異点(以下「実線部分固有差異点」という。)が存在するが,部分意匠同士の類否判断において,この「破線部分起因差異点」と「実線部分固有差異点」を等価値に扱うことは許されない。

①について

・部分意匠に関する類否判断のプロセス及び手法は,

Ⅰ意匠に係る物品の異同を認定し,実線部分と破線部分の記載の関係(位置,大きさ,範囲等)について考察し,実線部分を特定し,

Ⅱ実線部分全体を中心とする対比による異同を検討し,

Ⅲ実線部分全体の共通点・差異点を評価し,実線部分全体と破線部分全体との関係を総合し,部分意匠全体を観察して類否を判断する,

というように整理することができ,審決もこのプロセスと手法に従って類比判断を行っている。

・「破線部分起因差異点」は,実線部分に固有の形態の差異ではなく,実質的に破線部分の形態の差異であるから,部分意匠同士の類否判断において,実線部分に存在する差異点は,「実線部分固有差異点」を中心に,「破線部分起因差異点」の評価ウエイトを低くし,あるいは捨象して,その総合評価を行う必要があるのである。
②について

関連意匠制度は,「デザイン開発の過程で,一のデザイン・コンセプトから創作されたバリエーションの意匠」を,互いに関連づけて,同等に保護するものであるから,関連意匠制度の下で保護される「類似する意匠」に該当するか否かは,本意匠との間のデザイン・コンセプトの共通性いかんによるというべきである。

②について

デザイン・コンセプトが共通するからといって,それから創作された物品の形態である意匠法上の意匠が結果的にすべて互いに類似する関係になるとはいえず,関連意匠制度は,そうした類似しないバリエーションの意匠を保護することまでも想定しているものではない。

裁判所の判断 ①部分意匠における類否判断

・部分意匠における類否判断においては,「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分」(実線部分)の形態の異同を中心に観察し,その共通点及び差異点を総合評価して,類否判断をすべきである。

・物品を離れた単なる模様,色彩などだけでは意匠とはいえない。このことは,部分意匠についても同じ。

・原告は,対比すべき両意匠の間において,実線部分の差異点のうち,破線部分の形態に起因する差異点(原告のいう「破線部分起因差異点」)についてはこれを低く評価するか,あるいは捨象して類比を判断すべきであると主張するが,実線部分の形態はすなわち部分意匠の形態であり,その形態が何に起因しているか否かを問わず,部分意匠自体の形態であることに違いはなく,物品の部分の特徴を示すものであることに変わりはないのであるから,これを評価の対象から捨象したり,特別に低く評価することはできないものといわざるを得ない。

②関連意匠における類否判断

関連意匠も,具体的な物品(又は物品の部分)の形態(形状・模様・色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるもの)であって,物品を離れた「デザイン・コンセプト」なる抽象的,観念的なものでないことはいうまでもなく,その要件である「類似する意匠」か否かも,関連意匠として出願された当該意匠の具体的な構成態様に基づいて判断されるべきものである。仮に「デザイン・コンセプト」なるものが共通しているとしても,その具体化された物品の形態である意匠がすべて類似するとはいえないのであり,原告の上記主張は,独自の見解に基づくものであって,採用することができない。

考察 ・物品を離れた模様・色彩などでは意匠といえないことが、部分意匠と関連意匠にも当てはまる。

・部分意匠における差異点が何に起因にしているかは関係ない。

・「デザイン・コンセプト」なるものが共通していても具体的な形態が類似しなければ類似しているとはいえない。