同じ画像でも物品が違えば並存登録されるとのことですが、自由に実施できるのでしょうか?(利用関係)

この事例は、意匠審査基準における画像意匠・新規性・類否判断で用いられております。

画像の形態としては全く同じものという前提で、「電子メール送受信用画像」という画像意匠に対して、「電子メール送受信機能付き電子計算機」という物品に係る意匠とは類似になるけれども、「冷蔵庫」という物品に係る意匠は非類似であることを示してます。

もし「電子メール送受信用画像」という画像意匠が先に出願されていたものであった場合であっても、物品「冷蔵庫」の意匠権は物品非類似の関係にあるため、正当に物品「冷蔵庫」の意匠権が取得することができるはずです。

では、この物品「冷蔵庫」の意匠権は、自己の意匠権であれば自由に実施できるでしょうか?すなわち、他人の意匠権を侵害しないといえるでしょうか?

答えは、Noとなるのです。これが意匠権の利用関係という権利解釈のお話になります。

※上図は、意匠審査基準「第Ⅳ部 第1章 画像を含む意匠/6.2.2.1 両意匠の意匠全体の用途及び機能が同一又は類似であること/

<画像意匠と物品の部分としての画像を含む意匠の類否判断における用途及び機能の影響>P32」からの引用です。

 

まず、利用関係の基本的な考え方として、特許権についての利用関係を以下の図を使って説明します。

先願特許に対して、後願特許は構成要件にDが加わったことによって、先願特許とは別発明として権利が併存する可能性があります。

この場合、後願特許を取得した者は、自分の特許発明を実施するのは自由かというと、そうではなく、先願特許について許諾を得る必要があることになります。

このように、後願特許を実施すれば、常に先願特許を実施することになるが、その逆は常には成立しないという関係のことを「利用関係」といいます。

 

さて、意匠権についてはどうかというと、次の図で示すように、特許権の利用関係に似たような状態になることがあり得るのです。

すなわち、ハンドルという部品の意匠権が先願として存在していた場合、このハンドル部品を備えた自転車という完成品の意匠権が後願であったとしても物品が非類似の関係にあることから並存登録されますよね。

この関係は次のような態様でも成立し得ると考えられます。

先願:部分意匠 vs. 後願:全体意匠

先願:構成物品の意匠 vs. 後願:組物の意匠(←法改正により組物の意匠として部分意匠も認められている点も留意。)

先願:中抜き意匠(全体意匠) vs. 模様や色彩を付加した全体意匠

そして、特許権の利用関係にはなかった、意匠権の利用関係で特有の要件がありますので、この点を整理したのが次の図です。

学習机事件について詳しく見ていきましょう。

本棚を備えた机と、単なる机では物品としては非類似の関係になるという前提の下、机の部分同士を比較した際、青色で囲んだ引き出しの形態に差異があるけれどもここは意匠の要部ではないとして、むしろピンク色に塗った支柱と脚の形態の共通性を大きく評価して類似関係にあることから、利用関係にあるとして意匠権侵害が認められら事例です。

次に、鋸用背金事件についてです。

登録意匠とイ号製品を比較しますと、鋸の歯を支える背金の部分の形態が類似していて、鋸の柄の先端部分への結合部分(図の右端部分)の形態は異なっているのですが、この部分は柄の中に入ってしまって鋸の外観からみえないので類否判断の評価が下げられてます。ロ号製品は、鋸の柄という物品に替刃を装着した態様で販売しているものでしたが、物品としては非類似であるものの、利用関係が成立して意匠権侵害となった事件です。

さて、学習机事件や鋸用背金事件はいずれも昭和の時代のものでしたが、平成に入ってから意匠権の利用関係を判示した有名な事件として減速機付モーター事件があります。こちらの事件では公知意匠との関係で要部と認定されたモーターの背面部の形状が減速機付モーターという一体の製品に組み上げた際に、かかる要部と判断されたモーターの背面部の形状が外観上見えないことから利用関係は成立せず、ゆえに意匠権も非侵害となった事件です。

以上のように説明してきた意匠権の利用関係について成立要件を整理すると次の通りとなります。

法改正された画像意匠については、次のような態様で利用関係を意識して、意匠クリアランス調査などをしてゆく必要がありますので留意してください。

先願:画像意匠 vs. 後願:物品としての画像意匠

先願:アイコンの画像意匠 vs. 当該アイコンを含むメニュー画像意匠

先願:画像意匠 vs. 当該画像意匠を取り込んだ内装の意匠

先願:画像意匠 vs. 組物の意匠(部分意匠として画像意匠のみをClaim)

 

以上