意匠クリアランス調査・デザインアラウンド

2021/02/06

Q;意匠クリアランス調査とデザインアラウンドのやり方について教えていただけませんか?

A;意匠調査の詳細については、別途ご質問がきておりますので、そちらで詳しく回答いたします。ここでは、意匠クリアランス調査をした後における意匠マップの作り方と、デザインアラウンドにおけるリスクヘッジの手法をご紹介いたします。

意匠権の効力は「登録意匠及び登録意匠に類似する意匠」に及ぶのですが(意匠法第23条)、この「類似」の判断が実務上非常にむずかしいのですが、裁判に巻き込まれた場合には、客観的視点で状況証拠を集めて類似がどこまで及ぶかを主張してゆくことになるはずです。

意匠は権利範囲が図面で表されてますので、代表図をうまく使ってマッピングをしてゆくことで、気になる他人の先行意匠登録の範囲、すなわち類似となるか否か、について示すことができるので、かかるマッピングの一例を紹介します。

 

情報ソース:http://www.jipa.or.jp/jyohou_hasin/sympo/pdf/07sym_isyo.pdf

この事例は、携帯型音楽プレーヤーを対象物品としたマッピングです。

例えば、懸念すべき他人の登録意匠Aを軸にして、(1)かかる登録意匠Aの出願前までにどのような公知意匠が存在していたのか、また、(2)登録意匠Aの後からどのような意匠登録が併存する形で登録になっているのか(これらは特許庁によって非類似と判断されたものといえます)、を整理して並べてみます。

そうすると、上記(1)によって、登録意匠Aの新規な創作部分がどこにあるのかがみえてくると思います。他方、上記(2)によって、どのような改変を施すことよって登録意匠Aの権利範囲から外れてくるのかの傾向が見えてくると思います。そして、代表図を並べてきれいに並べてゆくと、後発意匠として参入することが許容されるであろう“スキマ”が見えてくることがあります。この“スキマ”に入るような改変をすれば、クリアランスがとれた形でのデザインアラウンドが可能になるはずはのです。

概念としてはご理解いただいたとして、実際にどうやってまとめるのかについても軽くご紹介しておきます。

情報ソース:http://www.jipa.or.jp/jyohou_hasin/sympo/pdf/08sym-isho.pdf

この図は実際の意匠登録例を並べてマッピングを行い、意匠権の権利解釈でよく出てくる基本的構成態様と愚弟的構成態様に分けて、意匠の構成を分解して対比し、類似とはいえない改変(アラウンド)が具体的にどの程度にしてゆかなければならないかを探ることになるのです。

留意点として、意匠権侵害によるダメージと、リスクヘッジする上での類否判断の心得は、上記吹き出しに記載の通りです。

以上、ご参考になれば幸いです。