意匠調査にはどのような種類があるのでしょうか?

2021/02/06

Q; 意匠調査にはどのような種類があるのでしょうか?どうやってやればいいのでしょうか?

A; 意匠調査は様々な目的で行われているのですが、大きく分けると、「権利状況調査」「出願前調査」「侵害防止調査」「動向調査」「無効資料調査」があります。以下、それぞれの調査について基本的なことをご説明いたします。

 

【権利状況調査】

意匠は登録され権利が発生しても、その権利には存続期間がある。また、途中で権利が無効になることもある。

権利状況調査とは、定期的な権利の管理として生死状況、年金支払い状況を把握するために行う調査であると共に、他者から意匠侵害の警告があった際に真っ先に行う調査でもある。

なお、権利状況は時間と共に変化することにも留意すべきである。

基本的には、ある意匠の権利状況を調べるためには、その意匠の発行国の特許庁が提供しているデータベースにアクセスするのが一般的である。

 

【出願前調査】

意匠出願を予定しているデザインがすでに登録されていた場合、意匠権をとることはできない。そこで出願予定のデザインに関する先行例調査をすることで、出願の要否を事前に判断することができる。もし類似する意匠が見つかれば、デザインを変更し出願できる可能性がある。

なお、意匠の類否の判断は、意匠に係る物品の認定および類否判断などの観点によって行われているが、審査する国や地域によって若干の差がある。また新規性については判断基準として、地域的な制限を有さない、いわゆる絶対新規性を採用している国が世界の趨勢を占めている。したがって、その公知意匠の発行国がどこであるかということは問われない。

《基礎知識》

海外意匠を対象に出願前調査を行う場合、検索項目としてはロカルノ分類を指定する方法、物品名を指定する方法、これらを組み合わせる方法などがある。

どのようなロカルノ分類で検索したら良いかわからない場合には、独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供する「特許情報プラットフォーム J-PlatPat」の意匠公報テキスト検索を利用して意匠文献を検索し、HITした複数の文献の中に高い頻度で現れるロカルノ分類を確認するという方法がある。あるいは調べようとしている国・地域の特許庁が提供しているデータベースにアクセスし、物品名にKWを入れ検索し、HITした意匠に付与されているロカルノ分類を参照・確認する方法もある。

 

【侵害防止調査】

実施を検討していたデザインが、すでに他者により権利化されていた場合、事前に把握することができれば他者の権利侵害を未然に防ぐことができる。

《基礎知識》

海外意匠を対象に侵害防止調査を行う場合、検索項目としてはロカルノ分類を指定する方法、物品名を指定する方法、これらを組み合わせる方法などがある。

検索対象とするロカルノ分類は、基本的には無効化したい意匠に付与されている分類となる。それ以外の分類を設定する場合には、調べようとしている国・地域の特許庁が提供しているデータベースにアクセスし、物品名にKWを入れ検索し、HITした意匠に付与されているロカルノ分類を参照・確認するという方法がある。なお、ロカルノ分類の定義についてはWIPOの以下の資料より参照できる。

http://www.wipo.int/classifications/nivilo/locarno/index.htm#

なお、意匠権には存続期限(国・地域ごとに様々)があることから、出願日などを検索条件に加えることで効率的に調査を行うことが可能となる。また意匠権は国ごとに発効しているため、調査対象国は製品を販売する予定の国とすれば良い。

 

【動向調査】

競合企業の出願動向を把握することで、その企業の事業戦略の傾向を知ることができる。これは、自社の事業戦略の計画を立案する際の参考情報となる。動向調査とは、要するに、誰が、いつ、どのようなアクションを起こしたのか、ということを調べることである。

《基礎知識》

特定企業の動向調査は先ず、出願人・権利者の名義の確認を行う。調査対象とする企業の正確な名義を把握することが重要である。

正確な名義の把握において注意すべき点は「揺らぎ・関連子会社」と「合併・社名変更」などである。例えば、以下のように①ブランド名として消費者に広く認識されている名称と意匠権の名義として使用される登記上の名義が異なっていたり、②社名変更や③企業合併などで権利者名義がある時点を境に変更されていたりする場合がある。これら企業名などは各企業のウェブサイトなどを参考にすると良い。

 

【無効資料調査】

ある日、他者から意匠侵害の警告を受けることや、事業化を検討していたところ障害となりうる他者の意匠が見つかることがある。そのような場合でも、すでに公開されている類似の意匠が見つかれば、無効にできる可能性がある。

《基礎知識》

現在、新規性の判断基準として、地域的な制限を有さない、いわゆる絶対新規性を採用している国が世界の趨勢を占めている。したがって、見つけたい先行文献に求められる要件としては、その文献の発行国がどこであるかよりも、 いつ公知になったのか、という公開日が重要となる。このため、無効化したい意匠の出願日以前に公開されていた意匠(優先権主張を有する出願の場合は優先権主張日以前)を調査することが必須となる。

海外意匠を対象に無効資料調査を行う場合、検索項目としてはロカルノ分類を指定する方法、物品名を指定する方法、これらを組み合わせる方法などがある。

検索対象とするロカルノ分類は、基本的には無効化したい意匠に付与されている分類となる。それ以外の分類を設定する場合には、調べようとしている国・地域の特許庁が提供しているデータベースにアクセスし、物品名にKWを入れ検索し、HITした意匠に付与されているロカルノ分類を参照・確認するという方法がある。なお、ロカルノ分類の定義についてはWIPOの以下の資料より参照できる。

http://www.wipo.int/classifications/nivilo/locarno/index.htm#

 

以上