中国GUI意匠侵害事件

中国にて、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)に係る意匠権(専利)の侵害事件があったので、以下、簡単に紹介します。

◆事件の概要:
意匠権者は、「グラフィカルユーザインタフェースを備えた車両用ヘッドアップディスプレー」という名称で意匠専利(係争専利)を持っており、F社が許可を得ずに係争専利と類似する車両用ヘッドアップディスプレーを製造、販売の申し出、販売していたことから、かかるF社の行為が専利権を侵害しているとして、北京知識産権法院に提訴し、F社が経済的損失40万元を賠償することを要求した。

 

【係争専利(本件意匠権)】     【被疑侵害製品】

 

◆裁判所の判断:

北京知識産権法院は審理を経て、次のように判断した。
まず、係争専利は車両のヘッドアップディスプレイに使用され、被疑侵害製品は車両用ヘッドアップディスプレイで、両者は同類の製品に属する。

次に、被疑侵害製品と係争専利はいずれも四角にラジアンがあるディスプレー付き直方体である。グラフィカルユーザインタフェース部分において、両者の主な共通点は、中間位置がデジタル表示領域であり、目盛表示領域として外側にいずれも2層の半弧図案があり、左下角と右下角にそれぞれデジタル表示領域があり、下の中間にすべて「小車」図案があり、その中にはいずれも複数の警告アイコンが分布されていることである。

両者の主な相違点は、被疑侵害製品の半弧状速度目盛が長尺状に表示され、係争専利がスケール状に表示されていること、係争専利の外層半弧図案は側辺細条があること、「小車」図案の位置、大きさ、細かい部分が異なること、左下の数字の表示桁数が異なること、警告アイコンの数と位置が異なることである。

これらの共通点と相違点を総合的に考慮すると、一般消費者の審美観察能力を基準として、全体的な視覚的効果から見ると両者の全体的な配置が似ており、共通点が全体的な視覚的効果に与える影響の程度がより大きく、明らかな相違点がなかった。なお、グラフィカルユーザインタフェース部分と製品の他の部分の関係は、全体的な視覚的効果に大きな影響を与えなかった。

従って、被疑侵害製品の設計は係争専利の保護範囲に入る。北京知識産権法院は、係争専利の類型、侵害行為の性質及び状況などを総合的に考慮してF社が朱氏に経済的損失15万元を賠償するよう判決した。

その後、F社は控訴を提起したが、北京市高級人民法院は審理を経て、控訴を棄却して原審を維持すると判決した。

 

◆情報ソース: https://bjzcfy.bjcourt.gov.cn/article/detail/2022/11/id/7040208.shtml