「建築物の外観・内装」の意匠図面(第一回)

2019/05/21

第一回:建築物の外観・内装デザインと「図法」

 

「建築物の外観・内装デザイン」が意匠権の保護対象に!

 

意匠法改正案が平成31年3月1日に閣議決定され、現在開会中の通常国会に提出されるというニュースが、今、意匠実務の現場では大きな話題となっていますね。
この改正案のうち、特に「意匠図面の作成」という観点から最も気になるのは、これまで意匠法の保護対象とされてこなかった「建築物の外観・内装デザイン」が、新たに保護されることになったという点です。

というと、「いやいや、そうは言っても、これまでの意匠と同じような図面を用いればいいだけの話じゃない?」と思われる方がいるかもしれません。
ですが、実はそんなに簡単な話ではなく、「建築物の外観・内装デザイン」ならではの、図面が一筋縄ではいかない理由があるのです。

そこで、ここでは図面の超・初心者にも理解できるよう、「建築物の外観・内装デザイン」ならではの図面の特徴や注意点などを、できるだけ簡単に分かりやすく解説します。
今回は、第一回として、建築物の外観・内装デザインに用いられるであろう「図法」を中心にお話したいと思います。

改正法案は、今国会で可決成立すれば早くて来年春にも施行されることになりますので、いざというときに適切に対応できるよう、早めに準備をしておきたいところですね!

 

建築物の外観・内装デザインの、米国での意匠登録例

 

米国や欧州では、建築物の外観・内装デザインはすでに意匠権の保護対象とされています。
そこで、実際に米国で登録された意匠の図面を参照してみましょう。

US D610266 Housing Structure

ご覧の通り、これは建築物の外観デザインの意匠です(斜視図と六面図の一部のみ抜粋しています)。
FIG.1は斜視図、FIG.2は正面図、FIG.4は右側面図ですね。

これらの図面を見て、「なーんだ、結局これまでの意匠と同じような図面で表されているじゃないか!」と思ったあなた。
あなたは経験を積んだ意匠実務者かもしれませんが、意匠図面を見る目はまだまだ甘いぞ、赤ちゃんレベルだ!
と、僭越ながら指摘させていただきます(笑)。
もっともっと図面を注意深く観察してみてください。

そうです、FIG.1です。何かがいつもと違いますよね?
FIG.1は「透視投影図法」といって、一般的な意匠図面の図法とは大きく異なる図法で描かれているんです。