「建築物の外観・内装」の意匠図面(第一回)

2019/05/21

平行投影図法と「透視投影図法」の相違点

 

では、実際の図を参照しつつ、平行投影図法と「透視投影図法」の違いを、(あくまでさらっと簡単に)説明しましょう。

上の図は、立方体を各図法で表したものです。
このように、二つ並べてみると、かなり違っていることが分かりますよね!

右の透視投影図は、違いが分かりやすいよう、あえて極端な表現を施したものです。
サイコロのような小さい物だと思って眺めると、とても不自然に歪んでいる気がしますが、
(ドバイにでもありそうな)とてつもなく大きな立方体状の建築物を、遠くにあるさらに巨大な塔のてっぺんから、望遠鏡で見下ろすように観察していると想像すると、ちょっとはリアルな感じがしてくるのではないでしょうか。
〔こうでもしないと自然な感じがしないということはつまり、極端すぎる遠近感がついているということです(図面描きはこれを、”パースがきつい”と表現します)〕。

一方、左の平行投影図は、意匠図面で「斜視図」として一般的に目にする等角投影図(アイソメトリック図)です。
このアイソメトリック図では、下図のように高さ方向を示す赤い線がすべて平行に描かれています。
また、左上がりの緑の線、右上がりの青の線も、すべてそれぞれが平行に描かれています。

ですが、前述のように、実際の人間の目には、近くのものは大きく、遠くのものは小さく見えています。
したがって、実際には、視点(カメラ位置または観察者の目の位置)に対して近い位置にある辺aよりも、遠い位置にある辺bや辺cの方が短く見えるのが自然です。
にも関わらず、緑色の線も青色の線もそれぞれ平行ということは、平行投影図では、辺a~cはすべて同じ長さに描かれているということです。
赤の線だけでなく、青の線、緑の線も同様であり、アイソメトリック図の立方体では、すべての辺が同じ長さに描かれています。
つまり、平行投影図とは、遠近感をゼロに打ち消した、実際の見え方とは異なる図なのです。
とても自然に見えるのに、実際は不自然な図だなんて、不思議ですね。

次に、透視投影図を見てみましょう。

辺aに比べて、辺bや辺cが短くなっているのが分かるでしょうか(定規を当ててみると、分かるはずです)。
さらに、高さ方向を示す赤い線は、下に向かうほどすぼまっています。
これと同様に、緑色の線は左上に向かうほどすぼまり、青い線も右上に向かうほどすぼまっているのが分かると思います。
これらの各方向を示す線は、下の図に示すように、実はそれぞれが一点〔この点を、消失点(Vanishing Point)と呼びます〕に向かって収束しています。

透視投影図で遠近感を出す仕組みは、このように各辺の延長線が一点に収束することにあります。
この消失点の位置は作図の際に任意に決めることができますが、描画の対象物と消失点との間隔が遠くなればなるほど収束がゆるくなり、近ければ近いほど収束がきつい(パースがきつい)図になります。
作図をする場合、消失点が近くにある方が実は楽なんですが、より自然で説得力のある図面に仕上げるためには、消失点を遠く離して描くなど、その位置にも工夫が必要です。

なお、ここでは、消失点が三つある「三点透視図」を例に挙げましたが、透視投影図にはこのほかに、消失点が一つの「一点透視図」、消失点が二つの「二点透視図」があります(が、ここでは詳しい説明は割愛します)。