「建築物の外観・内装」の意匠図面(第二回)

第二回:米国の意匠登録例から学ぶ「建築物の外観・内装デザイン」

 

第一回のまとめ

前回は、建築物の外観・内装デザインと「図法」について解説しました。
まずは、前回の内容をおさらいしてみましょう。

【要約】
・意匠法改正により「建築物の外観・内装デザイン」が新たに意匠権の保護対象となることとなった。
・しかし、建築分野、特に「建築物の外観・内装デザイン」においては、従来から、意匠図面に用いられる図法(=平行投影図法)とは大きく異なる「透視投影図法(パース)」という図法が慣例的に用いられている。
・そのため、いざ「建築物の外観・内装デザイン」を意匠出願しようとする際には、図面に関して混乱が予想される。
・なお、各図法の違いは、以下の表の通りである。


「建築物の外観・内装デザイン」の米国での意匠登録例を見てみよう

では、第二回となる今回は、「建築物の外観・内装デザイン」がすでに意匠権の保護対象とされている米国の意匠登録例を参照しながら、「建築物の外観・内装デザイン」における意匠図面の特徴と注意点を探っていこうと思います。

【1】建築物の外観・米国編

(1-1)”Housing Structure”(US D610266)
まずは、前回もご紹介した、”Housing Structure”(US D610266)の図面を、全図並べてみましょう。

前回もお話をしましたが、この”Housing Structure”の例では、斜視図にあたるFIG.1は透視投影図になっています。
透視投影図の中でも、二点に収束する「二点透視図」というものです。
三点透視図と異なるのは、この建物の高さ方向にあたる線がすべて平行に描かれている点ですね。

そして、FIG.2以降は日本の意匠図面でもおなじみの、一般的な六面図になっています。つまり、「平行投影図法」で描かれたものです。
つまり、この”Housing Structure”の例では、「透視投影図法」の図面と「平行投影図法」の図面とが混在しているんですね。

ちょっと面白いのは、FIG.7に底面図をつけているところです。
建築物の場合、底面が人目に触れる機会というのはあまり考えられませんから、自動車や重量物などの意匠と同様に、底面図は省略しても問題にならないケースが多いでしょう(もちろん、底面図をつけたために困るということも、まずないと思われますが)。