【受講レポート】RCLIP空間デザインセミナー
【日程】2019年3月18日(月) 18時00分~20時30分
【会場】早稲田大学8号館3階 308教室
【テーマ】「空間デザインの法的保護」
【司会】 高林 龍 早稲田大学法学学術院 教授
【登壇者】小林 清康 株式会社ケノス 代表取締役
松野 由香 株式会社内田洋行経営管理統括グループ法務部 知財課課長
松尾 和子 弁護士
茶園 成樹 大阪大学 教授
峯 唯夫 弁理士
【主催】早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP)
≪聴講メモ≫
◆松野氏の説明:
※内田洋行のオフィスデザイン事例の参考↓
https://office.uchida.co.jp/case/
◇事例紹介→FITEC(ファイテック)株式会社(富士通グループ)のオフィスデザインについて。
移転後のオフィスレイアウトイメージは↓
対面型4人掛けデスクをグリッド状に配置したフリーレイアウトのオフィスデザイン。
四人掛けデスクを千鳥状に配置することで社員同士の偶発的なコミュニケーションを起こしやすくしている。
この他、壁際に横長デスクで一人掛け席を一定間隔でレイアウトしたスペースを設けて、社員が集中して作業する場を設け、また、図書を読むなどの共用スペースを作ってカジュアルなミーティングをしやすいようにしている。さらに、大勢が集まる場として多目的ルームを設けて、プレゼンや懇親会を開けるようにした。
オフィスデザインに要する期間はおおよそ3~4か月程度。クライアントとのやりとりイメージは↓
オフィスデザイン開発の特徴として、クライアントの意向を組んだり、施工要件や現場対応などで最後の最後までデザインに修正が入るので、事前の固定化がむずかしいといえる。また、一度、完成したオフィスデザインもその後の顧客ニーズに合わせてカスタムされていくのが前提となる。
これに対して、プロダクトデザインの開発に要する期間は約1年程度(事前の固定化をし易い)。
◆小林氏の説明:
※ケノスの店舗デザイン事例の参考↓
◇事例紹介→LAWSONの店舗デザインについて。
約2年かけて店舗デザイン設計を行った。
女性を顧客ターゲットとし、都会的なデザインとした。
ローソンブルーも女性100人にアンケートをとって決定した。
上辺の白色部分は、ビルドインのときに白色部分で閉めることでローソンブルーを引き立たせる機能がある。
色味とプロポーションが大事。
ローソンカウンター(木製)についても2005年にGマーク/Goldを受賞した。
https://www.g-mark.org/award/describe/31569?token=Tspx0Nq1SB
顧客はカウンター越しに公共料金支払い代行、郵便ポスト、宅急便代行などを行うので、
滞在時間が長くなりつつある頃だった。木製とすることで顧客を温かくもてなしたかった。
その後、3年をかけて全国店舗にこのカウンターが採用されることとなった。
壁にかかっているカラーサンプルは、地域特性を勘案して店舗オーナーが木目の色味を
選択できるように工夫をした。
LAWSONの他、次の店舗デザインも担当した。
・CAINZ HOME
http://www.kenos.co.jp/works/01/
・LUCKY yaamnote
http://www.kenos.co.jp/works/05/
・TSURUYA
http://www.kenos.co.jp/works/06/
◆茶園先生の説明:
「内装の意匠」の扱いについて、A案(組物の意匠の亜種)とB案(他と同列)の考え方が提示された。法案はA案を意識しているように思えるが、空間デザインの本質を考えると物品との関連性で縛れないものも出てくるためB案の法的位置づけとすべきではないかと思える。
◆峯先生の説明:
デザイン経営宣言を受けてブランド構築に資するデザインの重要性が説かれているところ、空間デザインは創作活動の成果なので、商標寄りの考え方はなじまないのではないかと疑問が呈された。
◆松尾先生の説明:
著作権法、不競法、商標法の枠組みでこれまで内装デザインが保護された裁判例をいくつか紹介なされていた。
◆パネルディスカションの主なやりとり:
(1)内装デザインについての部分意匠をどう考えるべきか?
茶園先生→内装デザインについて部分意匠を除外すべきではないかと考えるが、法案はそうなっていなかった。例えば、部屋にソファが一つあって、このソファのみを権利要求するといった部分意匠がどう処理されるかだが、新規性や創作容易性という登録要件で審査されることになるであろう。(そもそもソファは一つの物品なのに、内装デザインの部分意匠という迂回した意匠保護ができてしまうことによって、一つのソファというデザイン創作が重畳的に保護されることについての問題が出るかもしれない。)
松野氏→オフィスデザインはそこで働く者のためのものであって、働く者の意志を反映してカスタマイズが進んでしまう。デザイナーがこうあるべきと意思表示しても固定化しづらいので、部分意匠で決め打ちするのがむずかしいのではないかと思う。
茶園先生→配置に特徴があるということで、配置をとらえた部分意匠について意匠権が成立した場合において、配置を変えるのがユーザー自身の可能性もある訳だが、このような場合、かかるユーザー自身を侵害者と捉えるべきだが、侵害補足のむずかしさは当然に残ることになる。
(2)内装デザインを意匠登録する意義はありそうか?
ありきたりの机を普通に配列しただけの内装デザインを意匠出願した場合、新規性や創作容易性の登録要件を満たさないとして登録されることはない。他方、特殊な形状の机を特別な配列でレイアウトしてなる内装デザインは意匠登録される可能性がある。
しかし、この特別な配列を変えてしまえば意匠権の効力が及ばないこととなる。
松野氏→オフィスデザインでは、ありふれた配置を繰り返し流用することがある。オフィス共通の解決策として似たものとなることもある。
顧客のイメージを膨らませてもらうため、過去に適用したオフィスデザインの事例についてこの顧客の許可を得た形で見てもらうことがある。
特徴的なポイントについてはもちろんデザイナーのプライドで使い回すことはしていない。
そうすると、ありふれた配置については意匠権がとれないはずだし、特徴的な部分については使い回さないので、意匠登録する意義は少ないように思える。
小林氏→店舗デザインについては、オフィスレイアウトについて顧客の行動データに基づいて導いていて、食品売り場であれば入口から出口にかけて顧客の購買意欲を喚起するようなレイアウトに落ち着くので、そういった意味では、どこも似たようなものとならざるを得ない。
コンビニでは、セブンイレブンがやると他のコンビニが追走することがよくある。
例えば、照明器具のレイアウトについて、セブンイレブンが平均照度をとるため通路に平行して配置すると他のコンビニもそうすることで商品を照らす明るさを最適にしたこともあった。
茶園先生→真似をされた者の救済手段として内装デザインを意匠登録する意義はあると考える。不競法に頼ろうとすると、周知性の証明が大変だし、有名でなくとも真似されることで被害がでることもある。
以上
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