物品と一体の画像デザインに係る意匠権に関する間接侵害規定の問題点

物品と一体の画像意匠の意匠権についての間接侵害規定の条文に問題があるようなので説明させていただきます。

 

令和元年の意匠法改正により、画像デザインについては、物品との関係を持たない、無体物としての概念で保護されることになりました。

しかし、法改正前に成立していた意匠権は、物品と一体のものであることが前提となっておりましたし、今現在も権利存続しているものがたくさんあると思います。

また、無体物として画像意匠としてではなく、物品の一部としての画像デザインとした方が権利解釈上有利となることもありますし、また、登録が得やすいという場合もあるため、今現在でも物品と一体の画像デザインとして意匠登録されているものはあります。

過去の法改正や審査基準改定の変遷に合わせた物品と一体の画像デザインの意匠登録の例を以下に挙げておきます。

 

さて、このように物品と一体の画像デザインに係る意匠権について間接侵害規定に問題があるのです。

すなわち、意匠法38条1号・2号の「画像を表示する機能を有するプログラム等」という概念についてですが、「物」に「プログラム等」が含まれていた令和元年改正前の状況と異なり、令和元年改正によって、物品の意匠に係る間接侵害の規制の対象から排除されてしまったままなのです。

すなわち、旧法第38条1号の「物」の概念には、「プログラム等」が含まれ(旧法第37条第2項かっこ書き)、物品とは区別された概念として規律されていました。また、同条同項かっこ書きには、「その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。」とも規定されていました。

これに対して、物品と一体の画像デザインに係る意匠権を救済する規定である新法38条1号・2号では、「物品又はプログラム等若しくはプログラム等記録媒体等」を規制対象としており、「画像」が挙がっていません。

しかも、新法37条2項で規定する廃棄除却請求対象としての「画像」の定義として、「その画像を表示する機能を有するプログラム等を含む」としたことを受けて、その後に続く「プログラム等」の定義において重複排除することが法改正された理由なのではないかと思われるのですが、「画像を表示する機能を有するプログラム等を除く。」と規定されています。

そうすると、新法下において物品と一体の意匠デザインに係る意匠権における間接侵害規定における行為規制対象からは、画像と、画像を表示する機能を有するプログラム等が欠落していて適用できないことになるのです。

よって、新法下において、物品と一体の画像デザインに係る意匠権では、当該画像デザインを表示させるアプリケーションソフトウェア(プログラム)を製造する行為やこれを譲渡等する行為について間接侵害とすることはできないことになってしまいます。

なお、物品と一体の画像デザインに係る意匠権の間接侵害について説明してきましたが、建築物と一体の画像デザインに係る意匠権についても同様の問題を孕んでいるといえます。

 

◆情報ソース:https://www.publication.law.nihon-u.ac.jp/pdf/property/property_16/each/08.pdf