連載1ー意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引きの解説

2019/08/03

今回より、「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き」の解説記事を掲載します。
意匠実務に関わる各関係者の皆様のお役に立てば幸いです。

ー意匠図面研究会編集スタッフ一同

関連リンク

特許庁ー「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き」
特許庁ー「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引きの改訂について」

1.願書の記載の基本

今後、解説内容を追加します。

2.図面の記載の基本

重要項目:

  •  意匠権の客体は、現実の立体物ではなく、その図面等によって表された立体の形態になる。(注1)

  •  図面等は、意匠権の客体となる形態が正しく理解されるよう、定められた作図方法に基づいて記載することが必要である。

注1:意匠法上の「物品」には、立体的、平面的な物だけでなく、物品の部分、操作に用いる画像も含まれます。意匠権の客体は物品の形態になります。

解説:
意匠登録出願において、図面は特許の特許請求の範囲及び明細書に相当する価値を有しています。
保護しようとする形態を如何に正しく表現するのか、また権利範囲を如何に適切に表現するのかが重要なポイントであり、意匠図面作成中に迷う部分でもあります。

例えば、実際の商品には、デザインのコンセプトとあまり関係のないネジや排気孔等が存在する場合があります。
ネジは複数の部品を固定するために使われる機能的な部品であり、強度の要求がなければ接着剤で代替することも可能です。
また、排気孔も実際の動作に必要な要素となりえますが、形態にとっては必ずしも必要な要素でもありません。
実際の商品形態を忠実に表現すると、かなり限定された権利になる可能性があります。

そこで、意匠登録の客体である形態の中でもっとも価値のある部分、つまり保護しようとする主要部分はどの部分なのかを理解した上で、必ずしも必要ではない要素については、適切に省略或いは削除する作業が必要になります。
つまり、現実的な形態よりも理想的な形態を表現することが重要です。
意匠図面作成の現場では、一般的にネジやデザイン要素ではない形状は削除して、なるべくシンプルな形状に表現するよう工夫しています。

また、製図規定では、形態の角部などの丸みのついたラウンド部分に線は表わさないことになっていますが、そのままでは図面を読む人が意匠権の客体となる形態を正しく理解できない可能性があります。

創作者は実際の物品形状に基づいて、自分の保護しようとする形態はどういうものなのかを理解していますが、審査官や競合他社のデザイナーなど創作者以外の関係者は実物ではなく図面から形状を理解するしかありませんので、形状に関する必要十分な情報を相手に提供出来なければ、保護したい形態の特定にズレが生じる可能性があります。

意匠図面を描く際には、常に相手が図面を読んでどんな形状をイメージできるだろうかと、考えながら描く事が重要となります。

ー続く